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会社のなかで活躍するための余白づくり 〜女性の働き方検討グループ パウダールームづくり奮闘記②〜

キャラクター
ハルトツツム
公式キャラクター「ハルオ」

すぐ形にしないって、実は一番むずかしい選択なのかも。

第2話:コンセプトは「余白」、ちょっと自分にもどれる時間・空間

第1話はこちらから↓
会社のなかで活躍するための余白づくり 〜女性の働き方検討グループ パウダールームづくり奮闘記①〜
1話「ほしいのは『着替える部屋、お化粧できる場所、くつろげる場所』ではなかった」では、「会社のなかに、くつろげる場所がほしい」という女性社員の声から始まり、環境に配慮した設備や空間づくりに取り組まれていると福井県に紹介をいただきエル・ローズさんを見学。そこで「仕事でベストのパフォーマンスを出すために必要な環境」という気づきに至るまでをお伝えしました。 

2話では、その気づきをどう具体化していったのか。なぜ、すぐに設計に入らなかったのか。LINEアンケート、社内での議論、建築家・高野さんとの出会い。試行錯誤の末に「余白」というコンセプトが生まれるまでのプロセスを追います。 

___________________________

古市 1話の最後で、「設備を新しくしたりリフォームするっていうモノの話、ではなく空間の話だ」と気づいた、という話がありましたよね。そこから、すぐに設計に入らなかったのは、なぜだったんでしょう。

小川 一言でいうと、このまま作り始めると、またズレると思ったんです。「くつろげる場所がほしい」という声はある。でも、それをそのまま形にしようとすると、やっぱり「どんな設備にするか」という話に引っ張られてしまう。それだと、いちばん大事なところが、置き去りになる気がしていました。

『すぐに設計に入らなかった理由』を語る小川さん。このまま作り始めると、またズレると感じたといいます。

小川 最初に手をつけたのは、設計でも、レイアウトでもありませんでした。女性社員へのアンケートです、それもLINEで。

古市 LINEで?ちょっと意外でしたね。もっと正式なヒアリングの場を設ける、という選択肢もあったと思います。

言葉になりきらない声を少しずつ集めた。なんとなく落ち着かない。人の目が気になる。ひとりになれる時間がほしい。輪郭の曖昧な気持ちの声をプロジェクトのメンバーは集めていった。(写真はイメージです)

小川 あえて、軽い手段にしました。会議やヒアリングだと、どうしても「ちゃんとした意見を言わなきゃ」と構えてしまう。整理された要望よりも、そのままの気持ちを知りたかったんです。
・どんなときに疲れるのか
・どんな瞬間に、切り替えができないと感じるのか
・どこに行って、どうやり過ごしているのか
短い言葉でいいから、女子社員みんなに意見を出してもらおうと思いました。

古市 集まってきた声は、どんなものだったんでしょう。
小川 集まってきたのは、「〇〇がほしい」という明確な要望ではありませんでした。
「なんとなく落ち着かない」
「人の目が気になる」
「ひとりになる時間が欲しい」。
言葉はバラバラで多様で、そのままでは、設計図にはならないものばかり。でも、読んでいると私も「わかる、わかる、それ、それ」といった事象が言葉になっていたんですよね。

古市 の声をもとに、設備などの具体的な話を進めていったですね。

小川 はい。でも、正直に言うと、ここで一度、行き詰まりました。空間を使うひと「つかい手」として「悩み」は言葉として表現はできるんですよ。しかし、具体的に話していきましょう、ってなると、途端に「あのモノを入れよう、このモノを入れよう」っていう設備や機器的な話になってしまうんですよ(笑)。

古市 設備が欲しいわけではないですもんね。

小川 そう、そうなんです!「何を作るか、何を入れるか」を先に考え始めると「なぜそれが必要なのか」が、うまく言えなくなるっていう。

古市 そんななかで、どうしたんですか?

小川 エル・ローズさんの訪問メモを見返しました。メモしていた多くは、設備の寸法や仕様ではありませんでした。「誰のために設計されていて、どんな気持ちになってもらうか」という視点があったことを思い出しました。

古市 おっと、ユーザー視点で考えるっていう、デザインシンキングっぽいですね。まさか、そんな思考になるとは!

小川 デザインシンキングって言うんですか(笑)。正直、その言葉を意識していたつもりはないんですけど。ただ、このタイミングで、女性の建築家である高野さんとお会いできて直接お話ができたのは大きかったです。 

【高野さん(建築家 / 株式会社RIPEN代表取締役)】 福井を拠点に、住宅から公共空間まで、暮らしと社会に寄り添う空間・環境デザインを手がける女性建築士。地域に根ざした設計活動を行う

古市 どんなやり取りがあったかを教えてください。

小川 高野さんと最初にお会いするとき、私としては失礼もあってはいけないなと思って、やっぱり「こんな設備、こんな誂え等々」といった具体的な資料を用意していたんです。

古市 ええ、ほとんどの人はそのように用意すると思います。「これを、お願いします!」っていう方が、ある意味お互いに思考のキャッチボールのいったりきたりが少なくなるので楽ですしね。

小川 高野さんとお会いして挨拶もそこそこに、聞かれたのは「どんな気持ちになる場所にしたいですか」でした。

古市 いきなり“理想とする状態”を聞かれたんですね(笑)

小川 そうなんですよ!その瞬間は、少し戸惑いました。それまで私たちは、
「更衣室をどうするか」
「パウダースペースは必要か」
といった、ずっと「形」あるものの話をしてきたので。 建築家 高野さんとの話は、終始そういったモノばかりでした。 でもその会話で、頭が切り替わった感じがありましたね。 

建築家とここまで話すのは初めてだった、と小川さんは言います。建築家・高野さんとの対話のなかで、これまで曖昧だった考えが、初めて言葉として立ち上がってきた。

古市 いいですね。予算だったり空間の広さだったり制約条件はあるけれど、まずは何が「目的(理想の状態)」なんだろうっていうことを、すまいるプラスプロジェクトと建築家・高野さんがすり合わせているっていう…とてもいい!

小川 そこからは、不思議と言葉がでてきました。LINEアンケートで集まっていた声を、もう一度見返したんです。
「休憩のときでも、気が落ち着かない。くつろげない」
「ひとりになりたいときもある」
「生理のとき、ちょっと横にならせて(T^T)」
これらは、「〇〇がほしい」じゃなかった。「自分に、もどりたい」という気持ちじゃないかと。そこから、コンセプトが固まっていきました。

ここは会社の一角の空間である 
私たちは仕事でベストのパフォーマンスをだしたい/だす必要がある 
ベストの判断と集中力を保つことは、自分にも会社にもいいこと(なはず) 
仕事のなかで、女性が(少し)自分にもどれる時間と場所 
それは、「余白(ヨハク)」 

小川 プロジェクトのメンバーと、この考えに至ったとき「ああ、私たちが言いたかったのは、これだね」と、みんなが頷きました。

古市 設備を増やすかどうか、という話じゃなかったんですね。

小川 はい、あくまで結果として、そういった空間設計や設備になることはあると思います。私たちが設計すべきだったのは、設備ではなく「状態」だったんです。女性社員が仕事に最高の状態で臨めるための「余白」。これは個人の快適の話ではなく、私たちや会社の生産性に関わる環境を整える話だと。

【部屋の前につけられるプレートのデザイン】「レディースルーム」という名称は、あえて使わなかったそうです。休む、整える、ほっとする。そこで過ごす時間の積み重ねのなかで、使う人たちが自然と「ヨハク」と呼ぶようになる。そんな名前の定着を、この空間は意図しています。

古市 なるほど。「パウダールーム:ヨハク」っていうネーミングは、ここから来たんですね?

小川 そうですそうです。古市さんにデザインしてもらっている部屋のプレートは、そこからきてます!

古市 この段階で、「やっと作れる」と思えた感覚はありましたか?

小川 はい!仕事にベストの判断と集中にもどるための「パウダールーム:ヨハク」。この言葉がかたまったとき、「これだ!」っていう気持ちになりました。ここから、補助金の申請書も急ピッチで仕上げていきました!

___________________________

「余白」というコンセプトが固まったことで、やっと空間の設計が動き出しました。
次回、第3話では、その「余白」が実際の空間として完成し、働き方や公平性についての対話が生まれる様子をお伝えします。
第3話はこちらから↓
会社のなかで活躍するための余白づくり 〜女性の働き方検討グループ パウダールームづくり奮闘記③〜

“余白”って言葉、あとからじわじわ効いてくるタイプだね。

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